『BMXアドベンチャー』まさかの配信開始!
U-NEXTにて、2024年2月より配信ラインナップに加わった1983年製作のオーストラリア映画『BMXアドベンチャー』。監督は『スカイ・ハイ』(75)のブライアン・トレンチャード=スミス。主演はキャリア開始時期の初々しきニコール・キッドマン。当時16歳!
この作品、日本では1985年に『ネバーエンディング・ストーリー』との併映作として公開されました。BTスミス監督は、ジョージ・ミラー監督以上にオーストラリア映画界をB級エンタメ方面で牽引した重要人物ですが、長編劇映画デビュー作『スカイ・ハイ』以降、日本でその監督作が劇場公開される機会に恵まれておらず、本作はその数少ない一本なのです。
そういえば、昨年『スカイ・ハイ』の日本版Blu-rayのブックレット執筆の際、監督にリモートインタビューをやらせていただいたのですが、曰く「この作品は各国で稼いでくれたよ」との事でした。私もこのインタビュー時点では未見だったもので、もうちょっとこの作品の事について聞いておけばよかったと今、後悔しています。
『BMXアドベンチャー』をなぜここまで推すかというと、『マッドマックス』出演者、MFP隊員のチャーリーを演じたジョン・レイ氏が出演しているから。BMXを駆る少年少女たちを追いかけ回す、間抜けな窃盗団の一人として、ほぼ全編出ずっぱりですので、『マッドマックス』的に必見です。また、そのオーバーアクト全快なところ等、『マッドマックス』だけでは伺い知れなかった、ジョン・レイ氏の役者としての方向性や資質を観ることができます。
ジョン・レイ氏を、MMconのゲストとして日本にお招きする事は叶いませんでした。私は2019年にオーストラリア、メルボルンで開催された40周年イベントの時に初めて彼に会ったのですが、残念ながらその翌年に亡くなられてしまいました。会場ではとてもフレンドリーに接してくださった事に感謝しています。
内容としては、実にBTスミス監督らしいものとなっています。キャリアの初期は、ドキュメント映画はじめ、『がんばれスタントマン』や『スタントロック』(未)といったスタントパフォーマンスをフィーチャーした作品を得意としていた監督。ひたすら主人公によるバイオレンスと破壊が、ドラマそっちのけで連続する『スカイ・ハイ』もこの流れにあるのですが、『BMXアドベンチャー』も後半はほぼ自転車スタント映画となります。
もうちょっと主人公たちの青春模様を描いてくれればよかった気もするのですが、まあしかし、デビュー時期のニコール・キッドマンの素朴な感じと、スターオーラを観るだけでも価値ある一作である事は保証します。『マッドマックス』の時のメル・ギブソン同様に、観客の目を惹く原石の輝きがあり、芝居も達者なんですよね、やっぱり。
『BMXアドベンチャー』は劇場公開後、日本でもビデオ発売されましたが、その後、ずっと円盤化に恵まれず。10年くらい前でしたか、怪しい仕様のDVDが一時期発売されていたくらいで、日本国内においてはほぼ幻の作品となっていました。今回のU-NEXTの配信はちゃんとしたマスター&字幕の安心して観ていられるコンディションなので、是非この機会を逃さず御覧ください。